今年は何かと不自由なことも多かったと思いますが、受験を終えられた皆さま、おつかれさまでした。
例年は各塾で集まり列になって会場に入っていくのですが、今年はそれも控えられました。
個人的には、毎年の光景は「塾同士の戦い感」が過ぎると思っていましたので、
今年のようなスタイルはアリだと思います。もちろんお声かけくらいはしたいですが。
東京の開成中学では、通路の端の方に各塾の先生の待機スペースがあり、そこに生徒が近づいて行ってそっと声をかけてもらう形式だったと思います。生徒が主役、生徒が自分一人で会場に入っていく様は格好よく見えました。
さて、2021年灘中学2日目4番についてです。
まず、(1)はひとつずつあてはめても構いませんが、一番下は123が唯一結べない並べ方です。
同様に312、231の反対(対角)側を埋めることができれば、時間はかかりません。
(2)は、とりあえず色々調べて規則をみつけようとするのが普通かと思います。
2017年2日目5番がそのようなタイプの問題でした。
しかし、本問の場合、調べようとしてもイマイチしっくりこない。
そこで、2日目の問題で詰まったら意識すべきこと、「灘の先生は優しい。何かヒントがあるはず。」を思い出し、問題に書いてある図の利用方法を探ります。
つないでいる線を三回移動して元に戻るということは、「時間的イチイチ解法」を使えるのではないか!
「イチイチ解法」は、最短で行く道順の数を調べるとき等に使う解法です。
最短であれば一度通った地点に戻ってくることはありませんが、問題によっては何度も同じ地点を通ることができる設定もあります。そのような場合、同じ地点に数をいくつも書くことになりますが、それは書きにくいし見にくいため、時間ごとに分けてイチイチ解法を使います。
その解法を「時間的イチイチ解法」と呼びます。
ラボでは、6年生のNo.18Aの6番、No.37Bの4番、5年生のNo.34Aの4番等で学習しています
〇の中に書いている数字は、それぞれの地点への行き方の数です。
(2) 2+2+2+2=8通り
(3) 24+24+24+24=96通り
(A) と(B)で行き来できる場所を赤色、(C)と(D)で行き来できる場所を青色にしています。
(4) アイイイウ、ウイイイアの2通り
(5) 96-2=94通り 定番の余事象です。
本問はおそらく今年の2日目で一番完答率が低かったのではないかと思います。
我流で行こうとして途中でリタイアのケースが多かったか。灘の問題は正しい入り口がみつかれば手間はかからないことが多いため、焦らず入り口近辺をウロウロして正しい入り口を探すことが大事です。
今回のテーマの「時間的イチイチ解法」は、5年生から学習してきました。初めて学んだ時にはポカーンとしていた子も、6年生でさらに2回転するうちに精度高く使いこなせるようになりました。先ほど書きましたが、なぜ時間ごとに分けるのか、その成り立ちからしっかり理解していれば自分で判断して解法を選択できます。
最短の道順の問題を塾で習って答えを出すことができる子も、なぜ前の数字を足していくのか意味がわかっていない場合が結構あります。当然少しひねられると対応できません。
泣くことしかできなかった赤ちゃんがやがてハイハイを始め、歩き出し、言葉を話せるようになります。できることが増えてくることは、誰にとっても楽しいはずです。
算数でも自分の頭で考えてできることが増えてくれば、算数を楽しく感じるはずです。
逆に算数が楽しくないとすれば、算数への向き合い方を疑ってみる必要があると思います。
象や虎を見たことのない江戸時代の絵師は、象や虎の情報を聞いて想像で絵を描いたそうです。そこに描かれた象や虎は芸術的には素晴らしいものの、なんかヘンテコです。
算数においてもしっかり本質を見ずに進んでいくと変な方向に行ってしまいます。
本質が見えていると大きく外すことはありません。だって見ちゃってるんですから。
2月から新年度が始まります。
夢に向かって歩んでいきましょう。
さんすうLAB. 上本町教室主宰 井筒安秀