2022灘中2日目5


本問は、切り口をどのように作図するかということを問われています。

体積計算などはなく、純粋に切り口をどのような方法を使って認識するかという手法に対する知恵を問われています。

 

動画解説の手法は、ラボでは高さ書き込みと呼んでいる手法です。

立体の図示は大きく分けて、立体(見取り図)か平面(投影図)なのですが、複数方向から投影図を書く代わりに、高さを投影図(上から見た図)に書く手法です。

 

本問はずばりその手法が問われました。

 

この書き方は体積を求めたりする場合にもかなり利用価値が高いので、これも5年生で紹介、6年後期には『立体の見取り図が書けないときの代替手段』として重点的にやっています。

理想的には、理科の地層の計算問題とかとリンクさせるとよりイメージが具現化しやすいと思います。ここで重要なことは代替手段であるということです。

 

ラボのプリントを作るとき、最重要視していることですが、授業の構成は考えるべき順序に従って作るべきだと思います。スペシャル問題や予想問題とかいう言葉でごまかすのではなく、きちんと技能ごとの順序と段階を構築することが授業の役割です。

 

例えば、似たような単元で立体の影と切断がありますが、影は一般的に横から見た図や上から見た図を作成することが優先なので、まず①平面→②立体のイメージの順に構成しています。
2019年灘中2日目の難問と言われた影の作図は②立体のイメージができれば特別な技術は必要ありません。

 

一方、切断は①まず立体のイメージ→②次に補助図形という順に手を繰り出していくので無論、ラボのプリントはその順に作成しています。

 

本問も②の作図方法を利用しただけで特別な技術でもなんでもありません。

 

過年度の灘中模試の本数をこなしていけばできるようになるといっている人はこの視点が欠落しています。おそらく、問題を『考える』のでなく解き方を『知っている』ことが問題が解けることだと勘違いしているのでしょう。

 

合格発表当日、灘の先生からお話を伺ったのですが、今年度の入試はきれいにゾーン別に点数が分かれたそうです。灘が入試の作成で気を付けていることは『上位の取りこぼしがない』ことです。このことは、私たち受験する子どもたちを指導する側としてはとても大切な考慮すべき事実です。

 

仮にAランク、Bランク、Cランク、Dランクという算数の技能のレベルがあれば難易度Dまでできる子が難易度Aしかできない子と点差がつかないことがないよう留意して作成されています。

 

この点を踏まえると、どのような灘中入試の準備が必要不可欠か分かりますか?

 

シンプルな結論は、算数の技能のレベルを上げることです。

ここでいう技能のレベルとは、計算力ではなく、表現する技能と思考する技能です。

 

古い灘中模試を引っ張り出してきて、難易度Aの問題を短い時間でプレッシャーをかけて取捨選択させるのは、明らかに灘がこのテストで、意図していることと乖離しています。

 

 

 

最近、ネットの影響力は大きく子どもたちの人生にまで影響を及ぼしています。

やたら、「東大」「理Ⅲ」を標榜し、タイムリーに動画を出すことが、視聴回数をあげ、検索上位に上がることが正しいことを述べているというふうに捉えられがちです。

 

マスメディアに対するアンチテーゼとして、youtubeは一定の社会的意義はあると思いますが、一方で、モラルの低いものであっても視聴回数さえ取れれば、儲かるというモラルハザードをはらむ諸刃の剣であるといえます。

 

カリキュラムに自信がない塾は、東大理Ⅲに進学したyoutuberに未来を託しています。

私なら、そんなところに自分の子どもの未来を託しません。

 

少し、話は変わりますが、毎年、当日解答速報を行っている能開センターの先生を西大和の入試会場でお見かけしご挨拶させていただきました。能開センターは当日夜遅くに解答速報を出されています。その解答速報を「遅い」とか批判しているブログや当日解説を行っているうさんくさいwebや個別があるのですが、塾の先生はまず生徒に寄り添うことが一番です。

私のなかでは、子どもたちに2日目は、3日目のことを考えるべきだと話している以上、当日に解答を発表するという考え方はありませんが、大変なスケジュールのなか、あの西大和の送り出しを行ったあとに作成されていると思うと、本当に敬服します。この仕事にプライドを持って取り組んでおられる姿に感銘を覚え、小さい教室ですが、負けないように自分の職務とやれることを考え、身を削ってでも取り組まないと思った次第です。

 

当日、灘の問題を教室やWEBの世界で解説しているのは、ただの算数オタクか、あざとい自社のHPへの誘導をもくろむだけのもので、少なくとも「先生」ではありません。

 

まして、灘の先生が入試について話すチャンスさえ放棄し、子どもたちを指導するなんてありえません。

 

これは受験業界に限ったことではありませんが、便利になった反面、大声とスピードだけで再生回数や他者批判というかぶりものをかぶったやつらが、真実を押しのけ、メインストリームにでることができるのです。

 

このブログは、さんすうLAB.を主宰する私が、私の言葉で、私の考えかたを述べることに意義があると思っています。

 

灘の入試は算数が上手なだけで突破することはできません。

子どもたちの成長、それをも上回るブレイクスルー、そこにこの入試の醍醐味があります。

 

1日目の夜、子どもたちは何を想い、2日目に向かうのでしょうか。

 

そして、そのあとも僕らは『先生』であり続けないといけないと思います。

 

さんすうLAB.主宰 倉田泰成