さんすうLAB.のblog

さんすうLAB.(さんすうラボ)は兵庫県西宮市・夙川にある灘中、算数オリンピックを目指す子ども達のための中学受験算数専門の教室です。

2016年01月

2016灘中2日目3
2016灘中2日目3(3)
まず,問題に立体を書き込んでみましょう。
2016灘中2日目3解説図
次に前からみた図を書きます。
2016灘中2日目3解説図2
 
さらに奥行きを書き込みます。
2016灘中2日目3解説図3
立方体の奥行きは6cmであることに留意して,
2016灘中2日目3解説図4

この問題は,影の問題ですが,
技術的には立体の重なりのときに使う技術がきちんとあれば簡単に解くことができます。

立体は解き方が塾によって様々ですが,ラボでは基本的には立体は立体として捉え,
方針を策定し,各方面から見た図を補助的に活用することで体積を求めていく練習をします。

 

今回の問題を解くのに必要な能力は
2016灘中2日目3解説図5
 
この3つになります。

 

ラボでは,前期は基本テクニックと作図の基礎にスポットをあてて学習し,
後期には影,切断,水,重なりという個別論点を通じ,ありとあらゆるパターンを学習します。

 

そのうえで,立体がうまく書けない場合を想定し,最後の3回は先の分野を問わず,
奥行
き書き込みの練習をしました。


下はその問題です。
ラボ テキストANo.37 10番
BlogPaint


5
年前,某塾の合否判定テストでも扱われていました。
逆に言えば授業では扱わない論点です。


僕たちが,子どもたちの努力に応えるためやるべきことは
プリントを刷って何をやらせるかではありません。

何を伝えるかです。

たくさんの問題をやって,たくさんの時間を使い,疲弊するだけの勉強ではなく,
自分でできることを一つずつ増やすことが,中学受験を通じての成長です。

 

今年度も,1日目5892日目12など
ラボでやった問題と同じ問題が出たから合格点をとれたのだとは思いません。

そんなことより,
1年かけて図が書けるようになり,数ある考え方の中から上記の考え方を選択できる
ことこそが合格への力です。

 

 

さんすうLAB.主宰 倉田泰成

 

 

2016 灘中入試を20分で解こう②

2016 灘中 1日目6

2016灘中1日目6


今年度屈指の難問です。いろんな方からのリクエストが多いので早めにアップします。

 

1111111111×1111111111×49

 

ここで,2006年東大寺で出題された規則性を使います。

2016灘中1日目6解説図
あとは,分配法則を使って計算するだけなのですが,気をつけるべき点が繰り上がりです。

49×994851

49×984802 
より
B11桁目の数は4と決まります。
ところが
B11桁目はA1桁目になるので

12345679009876543211111111111

1111111111×(501)
2016灘中1日目6解説図2
 


今回使った考え方は,


1
並びの規則性

範囲を絞る

繰り上がり

 

実際には49をひたすら書いて規則性繰り上がりで解いた子らが多かったようです。

 

直前期に,子どもたちとやる作業の一つとして,
塾などで学習してきた過去問をもう一度一緒にやりました。
まずは
,
だまってやってもらってから一緒に工夫を考えていきます。

 

例えば,昨年度の2番なども81とおりを調べればよいのですが,
1
つ気づけば27とおりになり,もう一つ気づけば31パターンに集約されます。
27とおり調べるのを待ってから4パターンに分類することを教え込むのではなく提示するのです。

 

ここで,重要なことは,もっとも簡単なやりかただけではありません。
子どもたち自身が最短の道をはずれても
,
自分で解答までの道を拓くことが大切なことです。

 

ラボでは,上の3つの論点をばらして学習しました。

実はこの問題の元ネタが2005年の広中杯に出題されています。
 2016灘中1日目6解説図3

こうやって書くと
,数学オリンピックから灘中は出題されるとかいう人が出てきそうですが

結論から言って,数学オリンピックをやらせてもこの論点がつかめないと思います。


この論点を伝えるためテキストを作る際
,この問題も一旦入れたのですが,
難しくて子どもたちには伝わりきらないと思い,
1
続きと繰り上がり,9並びから1ずつ引いていくというところを別個の問題で扱いました。

 

来年以降も,例えば,今年度のこの問題を授業で扱うことは考えておりません。
そのかわり
,繰り上がりや範囲はもう少し増やしてもいいかなとは考えています。
 

 塾の指導で,簡単な問題を取って,難しい問題を捨てなさいということがありますが,
子どもたちはテストを通じ,そういうことは自分でやっています。

彼らができないのは,その問題が簡単か難しいかが,見抜けないのです


ラボでは
,今回の入試では70点台2つの150点付近の方が中央値でした。

2日目で1問落として7050台というパターンのかたもいらっしゃいましたが,
いずれにせよ,合格者平均の115点からすれば,すこし違うステージで戦えたのだと思います。

 

この問題を捨てるように指導するのか,やり方を覚えるのか,いろんな灘中対策があると思います。

 

僕は,ひとつひとつの原理を明らかにして,伝えていくのが僕らの役割であり,
本質に迫っていく過程こそが算数だと思います。

入試はゴールでありスタートです。
合格最低点が目標ではなく
,その先を見据えていれば,いつか必ず雲のない世界が広がってきます。

 

今年度,予想通り11問になり,問題に難易度をつけて取捨選択という時代は完全に終わりました。
取れるところを取っていくのが灘の入試ではなく
,取れないところを取っていくのが灘中の入試です。問題を捨てる練習は要りません。
見極める力が必要なのです。

 

順境のときではなく,逆境の時にこそ人間の本当の力が問われます。
これから灘中をめざすみなさんは考えることから逃げないでほしいと思います。
解答を写して覚えるのではなく
,先生や仲間と考えるのが大切なことであるとともに,
受験勉強で最も楽しいことです。

 

国語では今年度,物語が久しぶりに出題されました。
算数も
2日目は立体3,数の性質2題とかなり偏った内容でした。
言い換えれば傾向対策といったものの逆を狙っているのかもしれません。

 

ラボでは当日来ていた子らと,数と立体のプリントをやり直しました。

よくヤマを張ってほしいというようなことを言われるのですが,ラボでは基本的にやっておりません。
入試の対策というのは
,出そうなところをすることでなく,自分のできないことをやっていくものです。
当たり前のことなのですが,あまりに塾の課題が多くそのことが出来ない子が多いのです。

 

個人的な感想なのですが,最近いくつかの塾の灘中模試の内容が意味をなしていないような気がします。灘中模試は的中させる必要はないと思いますが,せめて習ったことを考え抜くような問題を作ってあげてほしいと思います。
授業の内容が本番の入試に対応していないから足りない部分をテストに出して当たれば儲けものというのは
,本質を見抜くという作業とは全く異なります。

 

真実を見抜く目を養ってください。
そうすれば
,受験勉強も楽しくなると思います。

小学生の子どもたちには,大きな世界が待っています。
僕たちも知らない未来に漕ぎ出す子どもたちに大人は何を伝えるべきなのか
,
いつも灘中の門の前でそんなことを考えてしまいます。

さんすうLAB.主宰 倉田泰成

2016年 灘中入試を20分で解こう①

2016 
灘中 1日目4


今年度の灘中入試は合格者平均が
1日目54.8点,2日目61.2点と
昨年度と並ぶ難易度の高い入試になりました。

ただし,手数や計算力が必要な問題は全くなく,手筋が見切れた子には取り組みやすかったようで,
1日目の感想の中には解くのが楽しかったというのさえありました。

算数トップの子も,やはり例年同様に
2030分で12日とも解き終えたようです。

今年度も,一般的に正答率の低い問題の解説を通じて,さんすう
LAB.の目指す,
次年度以降の灘中や算数オリンピックを目指す子供たちの一つの方向性になるような
算数の取り組み方を提示していきたいと思います。

2016灘中1日目4


6
42回追いつく


2016灘中1日目4解説図


200m/分×9分÷6周=300m


300m
×4周=1200m


(1200m
200m/分×1)÷8分=125m/


(1200m
200m/分×1.5)÷7.5分=120m/

 

 

本番では手も足も出なかった人も多かったようです。
また誤答例としてダッシュ部分が
30秒で解いた人も多かったようです。

 

この問題が解けるか解けないかは

 

642

 

の意味が強く理解できているかどうかにかかっていると思います。


B
の速さが不確定なのでダイヤグラムは適当にしか書けません。
Bの線分図も何回ダッシュするのかが,分からないと正確に書けないのです。
 

そこで,『絶対』と言い切れる2回の追いつきをどう表現しようかと考えると

Bの線分図やダイヤグラムを動かすのでなく1200mを後から書くことで
2回追い抜きの範囲を正確に考えることができるのです。

2016灘中1日目4解説図2
昨年度も,作図をしない問題が出題されていました。
作図をしないというのは,書くことを怠けるという意味ではありません。

むしろ,ダイヤグラムをきちんと書けばできるというのが誤った考え方で,
速さの問題の本質を捉える努力を怠ったということです。

 

算数も考えるときは,言葉で考えます。
問題を解いていくうえで発見したことをまとめて
いったりするのもいい勉強法かもしれません。

 

ラボでは速さは注目すべき点を洗い出すところから学習し,
線分図,ダイヤグラムはあくまでその表現手段でしかないというスタンスで学習します。

 

結果論的に解けたのは解けたとはいいません。
その問題の主たるテーマを見抜くことが本当の学力だと思います。

 

本質を見抜く目を養ってください。
それこそが,灘中学に入ってから,次につながる力,創造する力です。

 


さんすうLAB.主宰 倉田泰成


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