さんすうLAB.のblog

さんすうLAB.(さんすうラボ)は兵庫県西宮市・夙川にある灘中、算数オリンピックを目指す子ども達のための中学受験算数専門の教室です。

2021年01月

先週、今週と受験を終えた6年生がみんな遊びに来てくれました。
受験生のみなさん、お疲れ様でした。
受験前に激励に来てくれた卒業生のみなさん、本当にありがとうございました。

6年生の子がプレゼントしてくれたので、手作りの立体に新しい仲間が増えました。
ありがとうございます。

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今年は何かと不自由なことも多かったと思いますが、受験を終えられた皆さま、おつかれさまでした。

例年は各塾で集まり列になって会場に入っていくのですが、今年はそれも控えられました。

個人的には、毎年の光景は「塾同士の戦い感」が過ぎると思っていましたので、

今年のようなスタイルはアリだと思います。もちろんお声かけくらいはしたいですが。

東京の開成中学では、通路の端の方に各塾の先生の待機スペースがあり、そこに生徒が近づいて行ってそっと声をかけてもらう形式だったと思います。生徒が主役、生徒が自分一人で会場に入っていく様は格好よく見えました。

 2021灘中2日目4

 

さて、2021年灘中学2日目4番についてです。

 

まず、(1)はひとつずつあてはめても構いませんが、一番下は123が唯一結べない並べ方です。
同様に312、231の反対(対角)側を埋めることができれば、時間はかかりません。

2021灘中2日目4-2

 

 


(2)
は、とりあえず色々調べて規則をみつけようとするのが普通かと思います。

2017年2日目5番がそのようなタイプの問題でした。

しかし、本問の場合、調べようとしてもイマイチしっくりこない。

そこで、2日目の問題で詰まったら意識すべきこと、「灘の先生は優しい。何かヒントがあるはず。」を思い出し、問題に書いてある図の利用方法を探ります。

 

つないでいる線を三回移動して元に戻るということは、「時間的イチイチ解法」を使えるのではないか!

 

「イチイチ解法」は、最短で行く道順の数を調べるとき等に使う解法です。

最短であれば一度通った地点に戻ってくることはありませんが、問題によっては何度も同じ地点を通ることができる設定もあります。そのような場合、同じ地点に数をいくつも書くことになりますが、それは書きにくいし見にくいため、時間ごとに分けてイチイチ解法を使います。

その解法を「時間的イチイチ解法」と呼びます。

 

 

 

2021灘中2日目4-8
2021灘中2日目4-9
2021灘中2日目4-10


ラボでは、6年生のNo.18A6番、No.37B4番、5年生のNo.34Aの4番等で学習しています

 

2021灘中2日目4-3
2021灘中2日目4-4
2021灘中2日目4-5
2021灘中2日目4-6

 


〇の中に書いている数字は、それぞれの地点への行き方の数です。

 

(2) 2+2+2+2=8通り

(3) 24+24+24+24=96通り


2021灘中2日目4-7

(A) (B)で行き来できる場所を赤色、(C)(D)で行き来できる場所を青色にしています。

 

(4) アイイイウ、ウイイイアの2通り

(5) 96-2=94通り 定番の余事象です。

 

 

本問はおそらく今年の2日目で一番完答率が低かったのではないかと思います。

我流で行こうとして途中でリタイアのケースが多かったか。灘の問題は正しい入り口がみつかれば手間はかからないことが多いため、焦らず入り口近辺をウロウロして正しい入り口を探すことが大事です。

 

今回のテーマの「時間的イチイチ解法」は、5年生から学習してきました。初めて学んだ時にはポカーンとしていた子も、6年生でさらに2回転するうちに精度高く使いこなせるようになりました。先ほど書きましたが、なぜ時間ごとに分けるのか、その成り立ちからしっかり理解していれば自分で判断して解法を選択できます。

最短の道順の問題を塾で習って答えを出すことができる子も、なぜ前の数字を足していくのか意味がわかっていない場合が結構あります。当然少しひねられると対応できません。

 

 

泣くことしかできなかった赤ちゃんがやがてハイハイを始め、歩き出し、言葉を話せるようになります。できることが増えてくることは、誰にとっても楽しいはずです。

算数でも自分の頭で考えてできることが増えてくれば、算数を楽しく感じるはずです。

逆に算数が楽しくないとすれば、算数への向き合い方を疑ってみる必要があると思います。

 

象や虎を見たことのない江戸時代の絵師は、象や虎の情報を聞いて想像で絵を描いたそうです。そこに描かれた象や虎は芸術的には素晴らしいものの、なんかヘンテコです。

算数においてもしっかり本質を見ずに進んでいくと変な方向に行ってしまいます。

本質が見えていると大きく外すことはありません。だって見ちゃってるんですから。

 

2月から新年度が始まります。

夢に向かって歩んでいきましょう。

 


さんすうLAB. 上本町教室主宰 井筒安秀

2021灘中2日目2

(1) 642737

(2) 25681175

(3) 1024243781

 

 

今年度、コロナの各学校の自粛要請のため、入試当日学校に行くことはかないませんでした。灘中2日目も朝夙川教室待機から、直接上本町教室に移動し、西大和当日特訓を受講する子どもたちに備えていたのですが、その移動中LINEにて問題を受け取りました。

 

電車のなかで、問題を見て4以外は、頭の中で解けたので、上本町教室で鉛筆を用いて解こうと思っていたのですが、着いた途端、上本町教室の井筒先生が『4って時間的イチイチやんな』と言われたので、本年度メインの4の解説は井筒先生に譲らせていただきます。

 

20212日目は135が非常に基礎的な問題だったため、24が合否を分けることになったと思います。合否を分けるといっても合格者平均が67.8なので、さらに算数で稼ぐという意味においてですが…

 

とりわけ、本問は『フラクタル図形』の一種である下の図形を自分の手で『書いたことがあるかないか』これで、20点の差がつきました。

 

この図は、奇数に〇、偶数に×をつけ、問題の表を右斜め下45度の方向から書いたものです。

 

図の黄色の△、赤の△、青の△の順に目線を広げていきます。

すると2段のとき、3個の奇数が含まれていることが分かります。

2021灘中2日目2-2

このように見ると、とても簡単な式と規則なのですが、小学生のみんなが苦手とする見方です。

2021灘中2日目2-3

小学生の規則性と言えば、等差数列、群数列が代表的なものですが、この回の授業では

等比数列に関するものを特集しています。

 

部分と全体が自己相似になっているフラクタル図形は等比数列の考え方に似ています。

余談ですが、フィボナッチ数列とフラクタル図形も密接なかかわりあいがあります。東野圭吾の小説で先日ドラマにもなった「危険なヴィーナス」では、この相関関係が伏線になっているのですが、僕らにとってはネタバレ的な伏線でした。

 

この数え方は、訓練しないとなかなか見つけられません。

この単元の代表的な問題であるコッホ曲線は中学入試において割と頻出単元で、塾でも扱うことが多いのですが、根本的に『目線の使い方』を練習しないのです。

 



下記の問題はラボで扱う問題なのですが答えは、

2021灘中2日目2-4

2021灘中2日目2-5
にあてはまる数が、図形のなかから数えられますか。
2021灘中2日目2-6

本問の数え方は西大和で2回出題されています。ラボのプリントで扱っている上記の問題は早稲田の問題なのですが、過去に灘の算数では出題されていません。

前回の話の続きなのですが、やはり、灘の過去問のみをやる受験対策はかなり危険だということが分かります。

この見方を身につけるためには、この過去問を来年の受験生にやらせるだけでは意味がありません。この論点をどのように身につけるのかというカリキュラムを組み、論点を徹底的に洗い出すことが必要です。

 

ちなみに、ラボではこの回の授業で、作図から数え上げ、そして○○を行い、後期にもう一度定義に戻り、○○を行うカリキュラムを組んでいます。○○はここでは書きません。やるのかやらないのかは各塾の判断だと思います。

 

社会でいう一問一答式問題集だけで、2次試験の問題が解けますか。その単語の意味を理解するには、その周りの状況をきちんと把握する必要があります。

 

『フラクタル図形』を知ることではなく、『部分から全体へ』という目線の動かし方を身につけてください。

 

 さんすうLAB.主宰 倉田泰成

 

 


2021灘中1日目7

2021灘中1日目7-2

A1から6

 

ABCD1001×A98×B7×CA2×B3×CD なので、

 

2×B3×CDA7で割ったあまりは同じ

  3   2 1

 

A6

 

6321÷7903

 

 

20192日目1のヒントを使ってみました。

1行目 正確にはA46ですが、16とイメージするとあとでBCDのいずれかであまりを調整すればよいことが分かります。

 

僕が出題するならABの条件を取り除いて、何通り?という問い方にして、この方法1択にすると思いますが、答えを1個探すと良いだけにしているので、難易度が低くなっています。

 

 

20分で解こう①の続きですが、これも過去問と同じです。

7の倍数判定法はたくさんあります。たくさんあるので、覚えるのではなく『位取りから作る』のです。

 

過去問をテスト形式で学習した場合、何点取れるかということが主眼になります。

特に、基本技術が身についていない子どもたちにやらせる過去問は、できるところを探す練習でしかありません。

今年は、塾によって1日目の出来がはっきりと分かれました。

 

時間を計って、点数を出す練習では通用しないのです。コピーを配り解説を読んどいてというならば、時間を計らず重要問題のみを類型化してやることのほうが、はるかに効率的です。

しかし、今年の入試の結果を受けて、作成技術のない塾はますます過去問さえやればよいという方向に進みそうです。宿題という名の強制力で、解説を写すことは過去問を暗記教材にしてしまいます。このあと、解説する予定ですが、2日目4のようなクオリティーの問題を直前期に用意できるのであれば、暗記させればよいのですが、灘の過去問を先にやって、直前期に他校の問題の寄せ集めで、仕上がるのでしょうか。

 

 

 

また、基礎スキルが備わっていない状態での過去問特訓は意味がありません。

時期で言えば2学期、少なくとも6年生で学ぶ基礎技術が一周してからでなくてはならないと思います。

ウィークデーの授業が、年単位でカリキュラムを組んでいる以上、春から過去問特訓をしてもそれは本末転倒であり、子どもたちの頭の中にどのように解くための技術が備わっていくかを全く考慮に入れていないということなのです。やればいいという問題ではありません。子どもたちの立場に立って考えるのがカリキュラムです。

 

過去問を学習するコツは『言語化』です。

いえ、『言語化』までしないと、灘の未来問には通用しません。

 

先に書いたように、この問題も難しく出題しようと思えば、出題することはできます。言い換えると、灘があえて簡単に出題したのです。

 

今年度は簡単にし過ぎました。しかし、このことと作問能力は関係がありません。作問能力が追い付かなければ、しっかりと過去問を分析し、技術を『類型化』することが塾の役割だといえます。

 

100点が30人以上いる入試で数問「的中」などといっていると本当にやばいです。全問解けている子どもたちがたくさんいるのですから。

 

技術をきちんと『類型化』して身につけておけばどんな問題でも100点を取ることは可能です。

 


さんすうLAB.主宰 倉田泰成

2021灘中1日目5

A×A115の倍数

 

(A1)×(A1)35の倍数なので

A3で割って12余る

  5で割って14余る

 

2021灘中1日目5-2

 

今日の洛星で2021年最難関の入試日程がすべて終了しました。

今年度の算数は、平均点が過去5年で最も高くなり、明らかに易化し、算数1日目は100点が複数でました。ラボだけでも3人いたので全体ではかなりたくさんいたことが推測されます。

 

このような2021年灘中入試において、特筆すべきは合格者平均83.0に対する全体平均65.1の乖離です。

 

今年度、ある関係者の話によれば、コロナ禍により、首都圏からの受験者は合格可能性の高いものだけに絞り込まれたそうです。

 

倍率の低下と首都圏の合格率の高さはこのことに因るものだと推察されます。

それなのに、約18点もの差が1枚のテストでついたのです。この数字は過去5年間で最高の数字です。2年前、算数の点数異常に低かったときは、49.838.511.3でした。

このように考えると、簡単な年度ほど、1日目の重要性が増すことが分かります。

 

易化の最も大きな要因として考えられるのが、過去問との類似性です。

そしてそれと並ぶくらいの大きな要因が検算の容易さです。

1日目、最後の立体は全くそのままでした。その他図形は基本的な問題が多く、数の単元も答えを求めるだけなら下手なやり方でもすぐに見つけられるので、全体的には難易度が低いテストだったように思われます。

 

さて、本問なのですが、『あまり分類』の割合の考え方を使って解いてみました。

ラボでは、灘の過去問と、最終回にもう一度この公式の考え方をやっています。

 2021灘中1日目5-3


2021灘中1日目5-4

 

今年度はコロナ禍で変則的な日程の講習等が多く、6年生として然るべき成長過程を経ることができず、受験を迎えた子どもたちも多かったものと推測されます。

 

幸い、ラボでは1回目の緊急事態宣言後すぐにリモートとの併用が準備でき、学習が続けられたこと、みんなの協力でコロナの影響を最小限に抑えて、受験を迎えることができました。

 

今年一年で強く感じたことは、夏の過ごし方です。例年、夏の人生を決める大きな模試に向け『自主勉強』をするところが、小学校の夏休み短縮による、夏期講習の詰め込みで学校対策ならぬ自分対策が不十分なまま2学期からの演習期に突入し、仕上がりの遅さの一因になったように感じました。

 

特に過去問に対するアプローチなのですが、過去問を教材としてそのまま扱うのは、秋以降、少なくとも一通りの本番で使う技術が出そろった時点が適切であると言えます。

学習の順序として過去問→論点ではなく、論点→過去問 だということです。

 

一部の塾や個別では、「灘中に対応するには、5年生からやらないと間に合わない」などというもっともらしい理由で「作る手間の要らない教材」をやらされています。

 

今回の入試でこの傾向が強くなることに対して、一度考えてみたいと思います。

下の問題は20142日目4の過去問です。

 2021灘中1日目5-5

 

形式的には過去問と同じですが、本質的には上記の2問と同じ問題です。

 

A×A17で割ったあまりなどという問題を灘模試で出すなら、この本質的なことが分かっていないものが作成したということになります。

15でも17でも2022でもセットごとに頑張って調べましょう()

 

 

1日目は、誘導がないため、自ら判断しなくてはなりません。

では、そのためにはどのように過去問を活用すればよいのでしょうか。

 

文章が長くなったので次の問題で、さらに論議を進めたいと思います。

 

 

さんすうLAB.主宰倉田泰成

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