さんすうLAB.のblog

さんすうLAB.(さんすうラボ)は兵庫県西宮市・夙川にある灘中、算数オリンピックを目指す子ども達のための中学受験算数専門の教室です。

カテゴリ: 灘中入試解説

2024灘中1日目_6

【解説】EFGHはカプレカ数なので、6147

    残りの数は2358

    よって与式は、853223586174となり8532



今回は、思いっきり論理破綻している解説をやってみました。

別にふざけているわけではありません。

今回はこの解説から灘対策のあるべき姿を模索してみようと思います。

 

カプレカ数とは

『定義』整数の桁を並べ替えて、最大にしたものと最小にしたものとの差を取る。
この操作によって元の値に等しくなる数をカプレカ数と呼ぶ。

 

本問においては、ABCDDCBAの操作のこととなります。

一般的に4桁のぞろ目以外の整数はこの操作を複数回やると必ず6174に収束することが知られています。

 

例  2024399662644176617461746174→…

 

賢明な読者のかたはここでお気づきだと思いますが、この問題の答えの候補(ABCDDCBA)6174だけではありません。

39966264432112343704も考えられます。

ですから、この解説は論理破綻しているのです。
分かりやすく言い換えると、
6174は答えの一候補ではあるが、他にも候補はあるため、数学でいうところの十分条件ではあるが必要十分条件にはなっていないため解説として不適切ということです。

 

実際に私が解いたプロセスをご紹介します。

 

1から8の和は369の倍数

ABCDDCBAは各位の和が等しいので、差であるEFGH9の倍数

よって残りのA,B,C,Dの和も9の倍数

 

1+2+3+4105+6+7+826よりA,B,C,Dの和、E,F,G,Hの和はそれぞれ18と決まる

2024灘中1日目_6-2

繰り上がりと1の位に注目すると

AD7のとき→E7  H3

AD6のとき→E6  H4

AD5のとき→E5  H5

AD4のとき→   …

AD3のとき→   …

 

ここで、F+G8と確定して(17)(26)(35)の組み合わせしかない

 

ここまでを一番上の式から読み取ることができれば、

(E,F,G,H)の組み合わせは(7,2,6,3)(6,1,7,4)しかなく

 

それぞれのとき、残りがABCDとなり

(E,F,G,H)  (A,B,C,D)   ABCDDCBAEFGH

(7,2,6,3)  (1,4,6,8)    864114687173  不適

(6,1,7,4)  (2,3,5,8)    853223586714  適する

 

 

使った技術は『9で割ったあまり分類』と『位取り』です。

この2つの技術すら学習していない(例えば虫食い算早く答えを見つけようトレーニング)は論外ですが、位取りの後の答えの絞り方がこの問題で制限時間内に解にたどり着くかどうかの分岐点です。

 

使った考え方は『範囲を絞る』と『9の掛け算の特徴』、

9の段は1の位が1ずつ小さくなっていくため、EFGHの組み合わせ(並びではない)2パターンしかないのです。

この2パターンまで絞るところの論理展開が勝負の分かれ目と言っていいでしょう。

 

もう一度今書いた直前の2段を読み返していただきたいのですが、上段は論理展開ですが、下段は視野の広さだと思います。

 

私が実際に解いたときには、位取りの式を立てた段階でカプレカ数の証明とリンクしたので、
カプレカ数
6174の裏の2358が各位の和が18であることを確認して

853223586174から解きました。

 

これはいわゆるメタ解きですね。

子どもたちにする解説としては下です。

 

ただ、答えを出すだけならこの問題の要件(1つしかない証明は不要かつ見つけるだけでいい)を満たしていますので、カプレカ数を紹介してみました。

 

この問題はいろんな塾の先生からご質問を受けたので解説を丁寧に作ってみました。

 

この問題を見てカプレカ数さえ思いつかないという指導者はいないと思いますが、
カプレカ数しか思いつかない指導はさらにそれよりレベルが低い、
言い換えると、論理のいろはさえ分かっていない指導だと思います。

 

 

以前ある塾の灘中オープンでアフリカの地図が掲載され最低何色で塗られるか?という問題が出題されていました。

所謂、4色問題ですが、この証明は、ケンプという数学者が1回解いたのですが、のちに間違いが見つかり、コンピューターによって端的に言えばしらみつぶしで解決されました。この証明はエレガントな解法をもじってエレファントな解法と揶揄され、いまだエレガントな解法は見つかっていません。

 

もしこの問題に興味があれば、ロビンウィルソン著茂木健一郎訳の四色問題(新潮文庫)を読むことをお勧めします。

 

私は読むのに丸2日かかりました。時間がないかたはNHKの笑わない数学でもやっていました。内容はないですが…

 

私は、四色問題やカプレカ数などを覚えさせるのは算数の教育ではないと思います。

 

もし、この対策を続けるなら172924153319581254312065344がタクシー数であることを覚えることが究極の灘中対策になりますね。

 

数の単元のさんすうLAB.のカリキュラムとしては前期はなるべく技術を広げ、後期は視野を広げることに重点を置いています。

 

本問でいうと、9の倍数判定法や位取りの立式は前期の間に、範囲を絞ったり、9の段の特徴は、後期に特に力を入れている内容です。

 

数の問題は、視野の広さが解ける問題の幅を広げます。

タクシー数や四色問題は、数という王国のなかの、辺鄙な片田舎の通貨くらいの程度でしかありません。

 

この問題を「カプレカ数覚えてたら早いよね」というのは、算数の教育としては逆効果です。

下手な当日解説や論理破綻している解説を大きな声でいうのは迷惑でしかありません。

最近、YouTubeなどですぐに解説をするのが、個別指導教室のプロパガンダの王道手段ですが、検索という行為は自分が興味ある部分だけの声のボリュームを上げているのと同じで、ついつい目立つものに目が行きがちです。

目立つものはすぐに目につくから目立つのであって、灘の対策の真髄は人の目が届かないところまで心が配れるかどうかということです。

 

話は変わりますが、今年度もこのブログをUPするまでの間、毎日なるべく入試会場に足を運んでいました。

 

前からずっと言い続けていることですが、とりあえず、入試期間中は6年生の指導をしていた私たちは問題について口を慎むべきです。
関西の中学受験は最難関は木曜日の洛星後期まで続きます。
子どもたちの気持ちが分からないユーチューバーは子どもたちが必死に未来と向き合っている受験を汚してはなりません。

 

『入試問題を入試期間中にYouTtubeで語らない』というボリュームを上げることができれば、いいのですが…

レベルが低いうえに声だけがでかい灘中指導には辟易します。

 

また、6年生をお子さまをどこにお預けしようかご検討のみなさんは、この問題をご質問していただくと、灘中に合格するメソッドをお持ちかどうかの試金石になると思います。

さんすうLAB.主宰
倉田泰成

2024灘中1日目_8
【解説】

2024灘中1日目_8-2

合同回転で色をつけた三角形は合同

三角形FHIは二等辺三角形

(18054)÷263

180(5427)99



今年度も始まりました『灘中入試を
20分で解こう』

 

さんすうLAB.で『過去問WEB講座』を開設したので、辞めようと思っていたのですが、
多くのかたのリクエストをいただき
(主に塾関係の方ですが)数問だけ扱ってみようと思います。

 

今年度は、データが示す通り近年でもかなりの易化であり、灘中らしい問題は少なかったと思います。他の最難関が軒並み良問をそろえてきたので、少し残念なところもありますが、その中でも灘中らしい学習効果の高い問題を題材として、これからの灘中対策について議論を深めたいと思います。

 

弊著、『問題を解くということ』もおかげさまで、ずっと売れ行きが好調で、今年度中に第二弾『灘中入試問題の解説の解説』を出版すべく執筆中です。

 

今回のブログは、それと同様に灘中の入試問題の単なる解法だけでなく、その解法をいかにして考えるか、またそのためにいかなる準備をすべきかということを主に述べたいと思います。

 

さて、本問ですがキーワードは『合同回転』

今入試で合格した子どもたちもこの『合同回転』を口をそろえていっていました。

またその中でもさらに印象的だった言葉を抜粋します。

『…、正方形が2つあって…』

まさしくこの言葉がこの問題の本質です。

FHに五角形の対角線と同じ長さの補助線を引くことが今回の解法ですが、そのためには色をつけた三角形が合同であることを見つけなくてはなりません。

 

私の教室ではこの考え方のことを単に合同ではなく、合同回転という言葉で学習しています。

同じ長さの2組の直線(CDFD,ADHD)が同じ角(本問は正方形の90)がこの形をイメージするための突破口となります。

 

 

『合同回転』という四字熟語は『合同』と『回転』という2つの要素から成り立っています。

ラボでは算数における技術として『言語化』を最重要視して指導しています。

合同回転や直角クロスなどはその最たる例で、このように分かりやすい名前をつけるということは知識にタグ付けをするようなもので、平たい詰め込み学習にくらべ、格段に本番で発揮できる可能性が高くなります。

 

最近、町にいっぱいできている『ちょこザップ』というジムがあります。

ライザップが手掛ける手軽なジムですが、とても素敵なネーミングだと思いませんか。

 

このネーミングが素晴らしいのは、この短いキャッチーな言葉だけで何をやっているのか私が説明をする必要もなくなんとなくイメージできることです。また、今回の件とは関係ありませんが、ライザップという本体のネームバリューも高める効果もあります。

 

図形はこのように言語化して対策するとかなり取りやすい単元だということができます。逆に類型化せずドリル形式では、本番のときにアイデアは出てきません。

 

ちょこザップとユークリッド互除法ってどちらがそのものの本質を言い当てていますか?

次回はカプレカ数についてです(笑)。


さんすうLAB.主宰
倉田泰成

2022灘中2日目5


本問は、切り口をどのように作図するかということを問われています。

体積計算などはなく、純粋に切り口をどのような方法を使って認識するかという手法に対する知恵を問われています。

 

動画解説の手法は、ラボでは高さ書き込みと呼んでいる手法です。

立体の図示は大きく分けて、立体(見取り図)か平面(投影図)なのですが、複数方向から投影図を書く代わりに、高さを投影図(上から見た図)に書く手法です。

 

本問はずばりその手法が問われました。

 

この書き方は体積を求めたりする場合にもかなり利用価値が高いので、これも5年生で紹介、6年後期には『立体の見取り図が書けないときの代替手段』として重点的にやっています。

理想的には、理科の地層の計算問題とかとリンクさせるとよりイメージが具現化しやすいと思います。ここで重要なことは代替手段であるということです。

 

ラボのプリントを作るとき、最重要視していることですが、授業の構成は考えるべき順序に従って作るべきだと思います。スペシャル問題や予想問題とかいう言葉でごまかすのではなく、きちんと技能ごとの順序と段階を構築することが授業の役割です。

 

例えば、似たような単元で立体の影と切断がありますが、影は一般的に横から見た図や上から見た図を作成することが優先なので、まず①平面→②立体のイメージの順に構成しています。
2019年灘中2日目の難問と言われた影の作図は②立体のイメージができれば特別な技術は必要ありません。

 

一方、切断は①まず立体のイメージ→②次に補助図形という順に手を繰り出していくので無論、ラボのプリントはその順に作成しています。

 

本問も②の作図方法を利用しただけで特別な技術でもなんでもありません。

 

過年度の灘中模試の本数をこなしていけばできるようになるといっている人はこの視点が欠落しています。おそらく、問題を『考える』のでなく解き方を『知っている』ことが問題が解けることだと勘違いしているのでしょう。

 

合格発表当日、灘の先生からお話を伺ったのですが、今年度の入試はきれいにゾーン別に点数が分かれたそうです。灘が入試の作成で気を付けていることは『上位の取りこぼしがない』ことです。このことは、私たち受験する子どもたちを指導する側としてはとても大切な考慮すべき事実です。

 

仮にAランク、Bランク、Cランク、Dランクという算数の技能のレベルがあれば難易度Dまでできる子が難易度Aしかできない子と点差がつかないことがないよう留意して作成されています。

 

この点を踏まえると、どのような灘中入試の準備が必要不可欠か分かりますか?

 

シンプルな結論は、算数の技能のレベルを上げることです。

ここでいう技能のレベルとは、計算力ではなく、表現する技能と思考する技能です。

 

古い灘中模試を引っ張り出してきて、難易度Aの問題を短い時間でプレッシャーをかけて取捨選択させるのは、明らかに灘がこのテストで、意図していることと乖離しています。

 

 

 

最近、ネットの影響力は大きく子どもたちの人生にまで影響を及ぼしています。

やたら、「東大」「理Ⅲ」を標榜し、タイムリーに動画を出すことが、視聴回数をあげ、検索上位に上がることが正しいことを述べているというふうに捉えられがちです。

 

マスメディアに対するアンチテーゼとして、youtubeは一定の社会的意義はあると思いますが、一方で、モラルの低いものであっても視聴回数さえ取れれば、儲かるというモラルハザードをはらむ諸刃の剣であるといえます。

 

カリキュラムに自信がない塾は、東大理Ⅲに進学したyoutuberに未来を託しています。

私なら、そんなところに自分の子どもの未来を託しません。

 

少し、話は変わりますが、毎年、当日解答速報を行っている能開センターの先生を西大和の入試会場でお見かけしご挨拶させていただきました。能開センターは当日夜遅くに解答速報を出されています。その解答速報を「遅い」とか批判しているブログや当日解説を行っているうさんくさいwebや個別があるのですが、塾の先生はまず生徒に寄り添うことが一番です。

私のなかでは、子どもたちに2日目は、3日目のことを考えるべきだと話している以上、当日に解答を発表するという考え方はありませんが、大変なスケジュールのなか、あの西大和の送り出しを行ったあとに作成されていると思うと、本当に敬服します。この仕事にプライドを持って取り組んでおられる姿に感銘を覚え、小さい教室ですが、負けないように自分の職務とやれることを考え、身を削ってでも取り組まないと思った次第です。

 

当日、灘の問題を教室やWEBの世界で解説しているのは、ただの算数オタクか、あざとい自社のHPへの誘導をもくろむだけのもので、少なくとも「先生」ではありません。

 

まして、灘の先生が入試について話すチャンスさえ放棄し、子どもたちを指導するなんてありえません。

 

これは受験業界に限ったことではありませんが、便利になった反面、大声とスピードだけで再生回数や他者批判というかぶりものをかぶったやつらが、真実を押しのけ、メインストリームにでることができるのです。

 

このブログは、さんすうLAB.を主宰する私が、私の言葉で、私の考えかたを述べることに意義があると思っています。

 

灘の入試は算数が上手なだけで突破することはできません。

子どもたちの成長、それをも上回るブレイクスルー、そこにこの入試の醍醐味があります。

 

1日目の夜、子どもたちは何を想い、2日目に向かうのでしょうか。

 

そして、そのあとも僕らは『先生』であり続けないといけないと思います。

 

さんすうLAB.主宰 倉田泰成

2022灘中1日目12


またまた、立体の問題です。本来、このブログでは、数や場合の数を扱うほうがよいのですが、

昨年夏、さんすうLAB.過去問講座(ラボに通われている方は無料)の会員制サイトを作ったため、
さんすうLAB.の強みである数や場合の数はここではアップしません。
比較的、誰でも解ける立体からもう一問ご紹介します。


本問のカギは立体図形の立体のイメージのしにくさです。卒業生の灘の生徒に解いてもらってもなかなかイメージしにくいようでした。私も黒板にきれいに作図できる自信はありません。

 

さて、そこで、ここからどういう手を打ちますか。解説をご覧いただいた方はお分かりの通り、本問の種明かしは立方体を真横から見た図です。

 

解説にある真横から見た図なのですが、これも基本図形の一つです。

下の問題をご覧ください。

2022年灘中入試1日目⑫-1
2022年灘中入試1日目⑫-2

さんすうLAB.では、No.38(最終回の一回前)で扱っています。

この問題の式の意味は一般的には意味が分かりません。

この式を立てるためには2つの図が必要であり、そのうちの一つが今回の問題の図です。

 

この横から見た図はこのように立方体をきちんと分析する上で重要な図なのですが、
この図を正しく分析し、頭の中で構築するのは、小学生では限られた生徒にしかできません。


私は、浜学園で
10年間、算数のトップを狙うお仕事を担っていましたが、0組で解説する場合は、まず式を書き、子どもたちに説明をさせます。

0組の生徒にこの問題を解かせると、上の式以外で(例えば平方根など)解く子も出てくるからです。ですが、年度の最終になると、この立体は平方根など使わなくてもみんな暗算で求めることができます。ちなみに0組は講師の自由裁量による部分が大きいので、今何が行われているかは存じ上げておりません。

 

一方、私が運営しているさんすうLAB.は、無試験で最難関を狙うという約束だけで、子どもたちに来てもらっています。

ですから、この問題をやるために、この横から見た図を6年秋以降、頻繁に出てくるようにテキストを仕組んでいます。

 

逆にいえば、前期には出てこない仕組みになっています。
6年前期では立方体に他の立体を入れる(入れ子)がきちんと立体視できない子がいるのです。
これは上位の
5年生でもいえることです。

 

 

本問の成否の分岐点である『横から見た図』は、解説動画の正三角形ABCがこの角度から見ることで平面で表せる、というのがイメージしにくい立体図形の問題を簡単な相似形に平面化するカギになったことがお分かりでしょうか。

 

これで、最初に感じた立体が書きにくいという問題点が解消されたのです。

 

この『横から見た図』が灘で出た場合、算数がわかっていない方は「過去問の焼き直しが出た」というか、それ以前にこの問題との関連性が見いだせないでしょう。

 

正三角形のみならず正六角形や、上の問題の長方形に平行な切り口たちはみんな仲間で、
横から見た図によって平面化できるのです。

 

今回は、算数的なネタばらしをしすぎてしまいました。

 

灘の模擬テストは、こうやって作るのです。
少し古い中学への算数をそのまま出すなら、もう塾のテキストを中学への算数にするほうがましです。

 

今回、子どもたちの証言によれば、上位のかたは、この問題は立体座標、9番は余弦定理で解いたそうです。
そのレベルの数学の技術を身につけるか、立体や平面図形の見方を身につけるか、真実はその人の数だけあるとどこかのドラマの主人公が言っていました。

 

ある個別指導では、時間が余ったのでルートの勉強をしていたそうです。立方体を横から見た図を一回でも書いたのでしょうか。

 

算数の世界には、数学にはない、ものの見方があります。


さんすうLAB.主宰 倉田泰成

 

 

 

 

 

このページのトップヘ