2021年 灘中入試2日目4 灘中入試を20分で解こう④
今年は何かと不自由なことも多かったと思いますが、受験を終えられた皆さま、おつかれさまでした。
例年は各塾で集まり列になって会場に入っていくのですが、今年はそれも控えられました。
個人的には、毎年の光景は「塾同士の戦い感」が過ぎると思っていましたので、
今年のようなスタイルはアリだと思います。もちろんお声かけくらいはしたいですが。
東京の開成中学では、通路の端の方に各塾の先生の待機スペースがあり、そこに生徒が近づいて行ってそっと声をかけてもらう形式だったと思います。生徒が主役、生徒が自分一人で会場に入っていく様は格好よく見えました。
さて、2021年灘中学2日目4番についてです。
まず、(1)はひとつずつあてはめても構いませんが、一番下は123が唯一結べない並べ方です。
同様に312、231の反対(対角)側を埋めることができれば、時間はかかりません。
(2)は、とりあえず色々調べて規則をみつけようとするのが普通かと思います。
2017年2日目5番がそのようなタイプの問題でした。
しかし、本問の場合、調べようとしてもイマイチしっくりこない。
そこで、2日目の問題で詰まったら意識すべきこと、「灘の先生は優しい。何かヒントがあるはず。」を思い出し、問題に書いてある図の利用方法を探ります。
つないでいる線を三回移動して元に戻るということは、「時間的イチイチ解法」を使えるのではないか!
「イチイチ解法」は、最短で行く道順の数を調べるとき等に使う解法です。
最短であれば一度通った地点に戻ってくることはありませんが、問題によっては何度も同じ地点を通ることができる設定もあります。そのような場合、同じ地点に数をいくつも書くことになりますが、それは書きにくいし見にくいため、時間ごとに分けてイチイチ解法を使います。
その解法を「時間的イチイチ解法」と呼びます。
ラボでは、6年生のNo.18Aの6番、No.37Bの4番、5年生のNo.34Aの4番等で学習しています
〇の中に書いている数字は、それぞれの地点への行き方の数です。
(2) 2+2+2+2=8通り
(3) 24+24+24+24=96通り
(A) と(B)で行き来できる場所を赤色、(C)と(D)で行き来できる場所を青色にしています。
(4) アイイイウ、ウイイイアの2通り
(5) 96-2=94通り 定番の余事象です。
本問はおそらく今年の2日目で一番完答率が低かったのではないかと思います。
我流で行こうとして途中でリタイアのケースが多かったか。灘の問題は正しい入り口がみつかれば手間はかからないことが多いため、焦らず入り口近辺をウロウロして正しい入り口を探すことが大事です。
今回のテーマの「時間的イチイチ解法」は、5年生から学習してきました。初めて学んだ時にはポカーンとしていた子も、6年生でさらに2回転するうちに精度高く使いこなせるようになりました。先ほど書きましたが、なぜ時間ごとに分けるのか、その成り立ちからしっかり理解していれば自分で判断して解法を選択できます。
最短の道順の問題を塾で習って答えを出すことができる子も、なぜ前の数字を足していくのか意味がわかっていない場合が結構あります。当然少しひねられると対応できません。
泣くことしかできなかった赤ちゃんがやがてハイハイを始め、歩き出し、言葉を話せるようになります。できることが増えてくることは、誰にとっても楽しいはずです。
算数でも自分の頭で考えてできることが増えてくれば、算数を楽しく感じるはずです。
逆に算数が楽しくないとすれば、算数への向き合い方を疑ってみる必要があると思います。
象や虎を見たことのない江戸時代の絵師は、象や虎の情報を聞いて想像で絵を描いたそうです。そこに描かれた象や虎は芸術的には素晴らしいものの、なんかヘンテコです。
算数においてもしっかり本質を見ずに進んでいくと変な方向に行ってしまいます。
本質が見えていると大きく外すことはありません。だって見ちゃってるんですから。
2月から新年度が始まります。
夢に向かって歩んでいきましょう。
さんすうLAB. 上本町教室主宰 井筒安秀
2021年 灘中入試2日目2 灘中入試を20分で解こう③
(1) 64-27=37
(2) 256-81=175
(3) 1024-243=781
今年度、コロナの各学校の自粛要請のため、入試当日学校に行くことはかないませんでした。灘中2日目も朝夙川教室待機から、直接上本町教室に移動し、西大和当日特訓を受講する子どもたちに備えていたのですが、その移動中LINEにて問題を受け取りました。
電車のなかで、問題を見て4以外は、頭の中で解けたので、上本町教室で鉛筆を用いて解こうと思っていたのですが、着いた途端、上本町教室の井筒先生が『4って時間的イチイチやんな』と言われたので、本年度メインの4の解説は井筒先生に譲らせていただきます。
2021年2日目は135が非常に基礎的な問題だったため、2と4が合否を分けることになったと思います。合否を分けるといっても合格者平均が67.8なので、さらに算数で稼ぐという意味においてですが…
とりわけ、本問は『フラクタル図形』の一種である下の図形を自分の手で『書いたことがあるかないか』これで、20点の差がつきました。
この図は、奇数に〇、偶数に×をつけ、問題の表を右斜め下45度の方向から書いたものです。
図の黄色の△、赤の△、青の△の順に目線を広げていきます。
すると2□段のとき、3□個の奇数が含まれていることが分かります。
このように見ると、とても簡単な式と規則なのですが、小学生のみんなが苦手とする見方です。
小学生の規則性と言えば、等差数列、群数列が代表的なものですが、この回の授業では
等比数列に関するものを特集しています。
部分と全体が自己相似になっているフラクタル図形は等比数列の考え方に似ています。
余談ですが、フィボナッチ数列とフラクタル図形も密接なかかわりあいがあります。東野圭吾の小説で先日ドラマにもなった「危険なヴィーナス」では、この相関関係が伏線になっているのですが、僕らにとってはネタバレ的な伏線でした。
この数え方は、訓練しないとなかなか見つけられません。
この単元の代表的な問題であるコッホ曲線は中学入試において割と頻出単元で、塾でも扱うことが多いのですが、根本的に『目線の使い方』を練習しないのです。
にあてはまる数が、図形のなかから数えられますか。
本問の数え方は西大和で2回出題されています。ラボのプリントで扱っている上記の問題は早稲田の問題なのですが、過去に灘の算数では出題されていません。
前回の話の続きなのですが、やはり、灘の過去問のみをやる受験対策はかなり危険だということが分かります。
この見方を身につけるためには、この過去問を来年の受験生にやらせるだけでは意味がありません。この論点をどのように身につけるのかというカリキュラムを組み、論点を徹底的に洗い出すことが必要です。
ちなみに、ラボではこの回の授業で、作図から数え上げ、そして○○を行い、後期にもう一度定義に戻り、○○を行うカリキュラムを組んでいます。○○はここでは書きません。やるのかやらないのかは各塾の判断だと思います。
社会でいう一問一答式問題集だけで、2次試験の問題が解けますか。その単語の意味を理解するには、その周りの状況をきちんと把握する必要があります。
『フラクタル図形』を知ることではなく、『部分から全体へ』という目線の動かし方を身につけてください。
さんすうLAB.主宰 倉田泰成