【解説】EFGHはカプレカ数なので、6147
残りの数は2,3,5,8
よって与式は、8532−2358=6174となり8532
今回は、思いっきり論理破綻している解説をやってみました。
別にふざけているわけではありません。
今回はこの解説から灘対策のあるべき姿を模索してみようと思います。
カプレカ数とは
『定義』整数の桁を並べ替えて、最大にしたものと最小にしたものとの差を取る。
この操作によって元の値に等しくなる数をカプレカ数と呼ぶ。
本問においては、ABCD−DCBAの操作のこととなります。
一般的に4桁のぞろ目以外の整数はこの操作を複数回やると必ず6174に収束することが知られています。
例 2024→3996→6264→4176→6174→6174→6174→…
賢明な読者のかたはここでお気づきだと思いますが、この問題の答えの候補(ABCD−DCBA)は6174だけではありません。
3996も6264も4321−1234=3704も考えられます。
ですから、この解説は論理破綻しているのです。
分かりやすく言い換えると、6174は答えの一候補ではあるが、他にも候補はあるため、数学でいうところの十分条件ではあるが必要十分条件にはなっていないため解説として不適切ということです。
実際に私が解いたプロセスをご紹介します。
1から8の和は36→9の倍数
ABCDとDCBAは各位の和が等しいので、差であるEFGHは9の倍数
よって残りのA,B,C,Dの和も9の倍数
1+2+3+4=10、5+6+7+8=26よりA,B,C,Dの和、E,F,G,Hの和はそれぞれ18と決まる
繰り上がりと1の位に注目すると
A-D=7のとき→E=7 H=3
A-D=6のとき→E=6 H=4
A-D=5のとき→E=5 H=5
A-D=4のとき→ …
A-D=3のとき→ …
ここで、F+G=8と確定して(1,7)(2,6)(3,5)の組み合わせしかない
ここまでを一番上の式から読み取ることができれば、
(E,F,G,H)の組み合わせは(7,2,6,3)、(6,1,7,4)しかなく
それぞれのとき、残りがABCDとなり
(E,F,G,H) (A,B,C,D) ABCD−DCBA=EFGH
(7,2,6,3) (1,4,6,8) 8641-1468=7173 不適
(6,1,7,4) (2,3,5,8) 8532-2358=6714 適する
使った技術は『9で割ったあまり分類』と『位取り』です。
この2つの技術すら学習していない(例えば虫食い算早く答えを見つけようトレーニング)は論外ですが、位取りの後の答えの絞り方がこの問題で制限時間内に解にたどり着くかどうかの分岐点です。
使った考え方は『範囲を絞る』と『9の掛け算の特徴』、
9の段は1の位が1ずつ小さくなっていくため、EFGHの組み合わせ(並びではない)は2パターンしかないのです。
この2パターンまで絞るところの論理展開が勝負の分かれ目と言っていいでしょう。
もう一度今書いた直前の2段を読み返していただきたいのですが、上段は論理展開ですが、下段は視野の広さだと思います。
私が実際に解いたときには、位取りの式を立てた段階でカプレカ数の証明とリンクしたので、
カプレカ数6174の裏の2358が各位の和が18であることを確認して
8532−2358=6174から解きました。
これはいわゆるメタ解きですね。
子どもたちにする解説としては下です。
ただ、答えを出すだけならこの問題の要件(1つしかない証明は不要かつ見つけるだけでいい)を満たしていますので、カプレカ数を紹介してみました。
この問題はいろんな塾の先生からご質問を受けたので解説を丁寧に作ってみました。
この問題を見てカプレカ数さえ思いつかないという指導者はいないと思いますが、
カプレカ数しか思いつかない指導はさらにそれよりレベルが低い、
言い換えると、論理のいろはさえ分かっていない指導だと思います。
以前ある塾の灘中オープンでアフリカの地図が掲載され最低何色で塗られるか?という問題が出題されていました。
所謂、4色問題ですが、この証明は、ケンプという数学者が1回解いたのですが、のちに間違いが見つかり、コンピューターによって端的に言えばしらみつぶしで解決されました。この証明はエレガントな解法をもじってエレファントな解法と揶揄され、いまだエレガントな解法は見つかっていません。
もしこの問題に興味があれば、ロビンウィルソン著茂木健一郎訳の四色問題(新潮文庫)を読むことをお勧めします。
私は読むのに丸2日かかりました。時間がないかたはNHKの笑わない数学でもやっていました。内容はないですが…
私は、四色問題やカプレカ数などを覚えさせるのは算数の教育ではないと思います。
もし、この対策を続けるなら1729や24153319581254312065344がタクシー数であることを覚えることが究極の灘中対策になりますね。
数の単元のさんすうLAB.のカリキュラムとしては前期はなるべく技術を広げ、後期は視野を広げることに重点を置いています。
本問でいうと、9の倍数判定法や位取りの立式は前期の間に、範囲を絞ったり、9の段の特徴は、後期に特に力を入れている内容です。
数の問題は、視野の広さが解ける問題の幅を広げます。
タクシー数や四色問題は、数という王国のなかの、辺鄙な片田舎の通貨くらいの程度でしかありません。
この問題を「カプレカ数覚えてたら早いよね」というのは、算数の教育としては逆効果です。
下手な当日解説や論理破綻している解説を大きな声でいうのは迷惑でしかありません。
最近、YouTubeなどですぐに解説をするのが、個別指導教室のプロパガンダの王道手段ですが、検索という行為は自分が興味ある部分だけの声のボリュームを上げているのと同じで、ついつい目立つものに目が行きがちです。
目立つものはすぐに目につくから目立つのであって、灘の対策の真髄は人の目が届かないところまで心が配れるかどうかということです。
話は変わりますが、今年度もこのブログをUPするまでの間、毎日なるべく入試会場に足を運んでいました。
前からずっと言い続けていることですが、とりあえず、入試期間中は6年生の指導をしていた私たちは問題について口を慎むべきです。
関西の中学受験は最難関は木曜日の洛星後期まで続きます。
子どもたちの気持ちが分からないユーチューバーは子どもたちが必死に未来と向き合っている受験を汚してはなりません。
『入試問題を入試期間中にYouTtubeで語らない』というボリュームを上げることができれば、いいのですが…
レベルが低いうえに声だけがでかい灘中指導には辟易します。
また、6年生をお子さまをどこにお預けしようかご検討のみなさんは、この問題をご質問していただくと、灘中に合格するメソッドをお持ちかどうかの試金石になると思います。
さんすうLAB.主宰
倉田泰成