2022灘中1日目10




2022年度の中学受験も、22日の附属池田をもってひと段落しました。

今年度は、合格者平均が129.8点と昨年度から20点以上も低くなりました。

もちろん、合格するには合格最低点を上回ればよいのですが、
ラボでは合格者平均を基準に振り返っていきたいと思います。

 

本問は、正12角形の分割です。元ネタは、算数オリンピック、白陵後期にも出題されています。
さんすうLAB.では、爆発型といって白陵の問題を扱っています。

ラボプリ6年算数BNo8-2

この作図のポイントは正12角形の点対称性です。
12角形はもう一つダイヤモンド型とラボでは名付けている30度問題から派生するものがあり、
この
2つの図は基本作図として身につけるべき論点です。

解説動画にある通り、問題を読めば、図を見た瞬間にこの分割が出てくるので、簡単な問題だと思いましたが、周りの塾の先生がたの反応はいまいちでした。

2022年灘中入試1日目10-1

これは、慶應の問題で、よく塾の灘コースのテストやテキストに入っています。

ある塾は、直前3日前にやっていました。

 

お気づきのとおり、この問題と灘の本問は同じ作図です。

予想問題が『的中』ですね。

 

にもかかわらず、この問題が解けないというのはどういうことでしょうか。

2022年灘中入試1日目⑩-2

この原因を思考ベクトルから考えてみましょう。

 

慶應の問題; 最短距離の作図→書いた結果が正12角形

 

灘の問題; 正12角形が与えられる→正12角形を分割する

 

この灘の問題が自力で解けるためには、12角形の分割を自分で思い描くしかありません。

本問の成否はまさにこの点にあります。

 

試験当日、昨年度灘で100点だった生徒からLINEがきたので、この問題ラボでやったから解いてごらんというと、1分もたたないうちに下の図が返ってきました。

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これはひらめきではありません。

解ける人は、みんな、同じ図が浮かぶのです。受験勉強を終えても浮かぶということは、それは身につけたものの見方なのです。

 

この問題を自力で解ける(先の分割をイメージする)ためには、かすった予想問題や直前の詰め込みは役に立ちません。

 

この問題が得点できるようになるにはどうすべきか、カリキュラムというものについて論じてみます。

 

今年度の入試で確信しましたが、いくつかの塾はカリキュラムを見直さないと灘には対応できない時代に突入したと思います。

 

特に平常授業が、5年生の基本技術の確認だけで、確認テストに終始するのはもったいないと思います。

ウィークディも志望校別などと連動させて、強い基本技術を身につけないといくら3日前にやったとて、イメージングするところまでは到達しません。

 

ラボは前期、後期制を布いて、各分野を2回しするようにしています。

大手塾、浜学園のHPでは、スパイラル学習として、似たようなことが記載されていますが、単純に扱う数字をあげて反復させるというスパイラルではありません。

 

ラボでは、前期、後期で同じ問題は一切扱いません。

私のカリキュラムでは基本の構成は、5年が基本技術の習得、6年前期が解くための技術の習得、6年後期が技術の運用です。

 

例えば、甲陽で今年度出題された回転体では、5年は作図、6年前期は比やパップスギュルダンの定理を含む公式の運用まで、6年後期は途中回転(これが今年度の甲陽1日目で出題)など、難しい作図とパップスギュルダンの定理の利用方法を主なテキスト作成論点としています。

 

私なりの工夫としてはパップスギュルダンの定理をまず説明するときにあえて運用する要件を説明せず、この定理のイメージをつかませることを優先しています。

 

実は、パップスギュルダンの定理は体積と表面積で要件が違います。最初の段階でこれを覚えさせるよりは、成り立ちを理解し、イメージをつかませたほうが定着しやすいからです。

 

実は、この要件の違いは大手塾の先生も分かっていません。ですから、ここでは書きませんが、少しヒントを与えるとT型は表面積でのみ成り立ちますが、N型は表面積も体積も成り立ちます。

ウィキペディアで検索しても出てきません。意味が分からなければまず自分で考えてください。

自分で考えないのであれば、夏期講習や高槻特訓(高槻で回転体はよくでます)で解答をまる覚えですね。

 

これが、カリキュラムが存在しないということです。

 

 

今、子どもたちにとってよくない流れですが、灘に対応できない塾は講座を増やしがちです。

講座を増やしたとしても、この問題がひらめきだというなら、それは灘に合格するためのノウハウではありません。

むしろ、平常授業の負担を減らすことで、考える部分を大きくする戦略をとらなければ、夏期講習が終わってからの、普段の授業での速さ、立体、場合の数はナンセンスだと思われます。

 

学ぶ順序が逆になれば、暗記になります。

その意味では、灘に合格するための一つの要件は夏休みに入る前に算数の全容を理解することだと思います。

 

 

大人だって、慶應の問題から灘の問題は解けないのだからそれはカリキュラムではないのです。

最後の詰め込みも、最初のぶっ飛ばしも意味がありません。

5年生でまず図を使って考えられるようになり、黒板や自分のノートに書いた図の美しさに心動かされて自分のものとなるのです。定着とは、反復ではなく感動の深さです。

 

さんすうLAB.主宰 倉田泰成